01 数十億円規模の真珠を仕入れる「入札会」がもつ意味
国内営業部K.Yさんが自身の成長につながったプロジェクトとして挙げるのは、「真珠の仕入れ」です。真珠業界では例年12月から3月までの期間に、真珠の主な生産地である三重県伊勢地方、愛媛県、九州といった産地で、養殖業者から真珠を仕入れるための「入札会」が行われ、同時に、養殖業者と直接取引を行う「相対取引」も実施されます。その年に販売する真珠の多くを、この入札会・相対取引を通して仕入れるため当社でも非常に重要な業務と位置付けています。
入札会に参加するチームは、入札を行う「札書き」が1番、そのサポート役が2番、そして金額や品質の記帳や検算を行う3番と、3つの役割を分担します。
1番の仕事を担当するまでには、数年の経験では足りません。私も入社後はまず3番からスタートし、先輩たちの様子を間近に見ながら徐々に経験を積んで2番になり、さらに年数を経てようやく九州地区の入札会の1番を担当することができました。仕入れの規模は1シーズンで数十億円規模になります。安く仕入れるというより、品質に見合ったものをしっかり評価できるか、また会社全体のためにしっかりと量を確保できるかが問われる業務です。
非常に大きな責任をともなうプロジェクトですが、チームの一員として若いときから参加できること、また3番、2番、1番とステップアップの度合いがわかりやすい点からも、当社社員が成長するうえでは非常に重要な機会になっています。
02 VIP向けの宝飾販売で得た「段取り力」
大月真珠は同業社向けのBtoB販売をメインに行っていますが、同時に全国の百貨店向けに真珠や宝飾製品を供給し、販売業務も行っています。当社は百貨店の一般顧客向けの店頭販売だけでなく、百貨店の外商員とともに商品を販売する「外販」という業務も行っています。外販では販売活動の一環としてさまざまなイベントを企画していますが、A.Sさんは観光旅行と催事販売を合わせた「ツアー催事」の企画・運営に携わりそこから多くの発見・学びを得ました。
最初の宝飾部在籍時に、一時的にある百貨店の店長業務を担うことになりました。その年の9月に着任したのですが、11月には百貨店の中でも特別なVIP顧客だけを対象とした「ツアー催事」の開催が決まっており、私はその企画・準備・運営に途中から携わることになったんです。旅行チケットの手配にはじまり、ルートや宿泊、食事メニューなど、旅行の詳細なプランを作るために何度も打ち合わせを重ねました。例えば食事をする料亭に連絡を取ってメニューを一品一品確認し、必要に応じて一部を変更してもらったり、歩行に不安のあるお客様のために、道中に坂道を歩く行程がないか、また滞在先にエレベーターがあるのかを確認したり。一般の旅行会社であればそこまでのフォローはしませんが、私たちがおもてなしするのは百貨店のVIP顧客ですから、万が一にも不快な思いをすることの無いよう、細心の注意を払いました。
こうしたツアー企画では、お客様に観光・食事・温泉・宿泊を堪能していただいた後に、催事販売を開催し、自社商品を提案します。それだけに、販売に至るまでのサービスでいかにご満足いただけるかが販売実績にも大きく関係します。
結果的には、道中に大きなトラブルもなくお客様には喜んでいただき、当社の販売目標も無事達成することができました。打ち合わせは回数も多く、大変な面もありましたが、改めて振り返ってみると、どうすればより喜んでいただけるのか、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返したことが結果にも表れたと思います。「ここまでやらないといけないのか」というほど考えぬいてこそ、良い準備ができる。「段取り力」の重要さを身をもって実感できたことは自分のキャリアの中でも大きな出来事だと思っています。
03 上司・部下の立場から見る「人の成長」
それぞれの経験を語ってくれた二人は、国内営業部時代に上司・部下としてともに働いていた期間があります。上司は部下の成長をどうサポートし、部下は上司の働きから何を感じ、成長につなげるのか。大月真珠で「人が育つ」プロセスについて語り合ってもらいました。
A君は宝飾部、特に小売りの経験が豊富だったから、営業部にきたときも接客には何の不安も感じなかった。ツアー催事にも通じるけど、段取り力もばっちりだしね。でも、加工部の経験が浅いまま宝飾部に行った分、珠(真珠)をじっくり選別したり、品質を見極めて提案するという面では、まだ経験が不足していたよね。
おっしゃる通りです。宝飾部では製品販売がメインで、真珠をじっくり見る時間があまりなかったので、Kさんのいる国内営業部に配属されたときは原点に戻って、真珠を見る目を養わないと、真珠のプロを相手にする商談で信用を得ることはできないと考えていました。
だから当時は真珠の選別業務に時間を割いてもらったし、可能な範囲で私も一緒にやりました。やればやるだけできるようになった、というのが正直な感想で、選別の精度やスピードが上がるにつれて他の仕事の段取りもスムーズになっていることが実感できるほど、成長していたと思います。
その節はご指導いただいてありがとうございました(笑)。でも、「ツアー催事」で苦労した私の目から見ても、Kさんの「気遣い」はすごいと思います。仕入れや営業など、取引相手と接するときはもちろんですが、同僚との飲み会の席でも、段取り・気遣いがすごいですよね。
改めて言われると恥ずかしいね(笑)。でも、若手には「視野をひろく持とう」ということはよく言っているかな。見える範囲が広がることで、気配り・目配りができるようになると思うから。
もう少しKさんと一緒に国内営業で働きたかったという思いもありますが、再び宝飾部に戻った今も、国内営業時代にじっくりと真珠の選別を経験したこと、また仕入れや真珠業界について知れたことが大いに活きていると思っています。
A君のように、宝飾と営業を経験する人は多くないので、社内では貴重な存在だと思います。ぜひ営業の経験をいかして頑張ってほしいし、若手の中でリーダーシップを発揮してほしいと思います。
入札会には加工部・営業部のメンバーが3~4名でチームをつくって参加します。例えば愛媛であれば1月から3月まで入札会が行われるので、その期間は私たちも現地に滞在しながら、入札会に臨みます。真珠の入札は「手書きの入札フダ」などを今でも使う、昔ながらのスタイルで行われます。記帳ミスがないように2重、3重のチェックが必要ですし、真珠を評価する際にも複数の「見る目を合わせる」ことが重要ですので、チームで参加することには大きな意味があるんです。