関連会社で養殖した真珠以外に、毎冬行われる入札会と相対取引で真珠の買い付けを行っています。入札会では、愛媛県、三重県、長崎県などの九州の各地域で養殖された真珠を、50社ほどの加工業者で競い合って入札しています。大月真珠はその中でも、アコヤ真珠の買い付けでシェアトップです。

真珠の入札会は1ロットあたりの目方（単位は貫・匁）で取引され、高品質かつ目方が多いロットは、1ロットあたりおよそ1,000万円に及ぶものもあります。真珠は平均取引単価が海産物の中でも群を抜いてトップであり、海が育む宝石としての価値、貴重さを表しています。

仕入れた真珠はまず、ネックレス用の素材（両穴）とリング・ピアス用の素材（片穴）に分ける「用途別選別」を行います。
真珠の選別項目は「サイズ」、「キズ」、「形」、「色」、「光沢（テリ）」、「巻き」と大きく6項目あります。用途別選別では、これらの項目すべてを選別しますが、特に形とキズを注視しています。
真珠にはそれぞれ個性があり、同じものが2つとないため、その真珠一つ一つに最も適した用途を見つけていくことがこの工程の使命です。

方法に違いはありますが、どちらも一つずつ手作業で選別しているという点は同じです。ほぼすべての選別は、人の「手」と「目」のみで行われています。「見る」ではなく「観察する」という表現がふさわしいほどに、精密に真珠と向き合っています。

真珠の選別は自然光の下で行われるため、作業中、人工的な光源は一切使用しません。また、直射日光では光が強すぎるため、作業台は北側の窓辺に設置しています。本社の建築時からこの構想があったため、加工部の各部屋はすべて北側の窓を広くとれるよう設計されているのが特徴です。

天候の変化など、少しの光の具合によって表情や印象が変わったように見えてしまう場合もありますが、外壁側に開閉機能の付いたサンルーフを設置し、日射条件によって取り入れる光量を調節しています。

穴のあけ方は大きく分けると下記の2通りです。

片穴

イヤリングやピアス、リングに使用するものは、金具の芯に真珠を差し込むため、片側だけ穴をあけます。さらに、珠の約2/3まで穴をあけ、綺麗な面が残るようにします。

両穴

ネックレスやブレスレットなど真珠に糸を通して使用する場合、真珠を貫通させて横側に綺麗な面が残るよう穴をあけます。一方から貫いてあけるのではなく、上下から2本の針を使用し、片方ずつあけて貫通させます。

この一連の動作で一粒の真珠に穴があきます。1日平均約3,500個あけます。
真珠一つ一つの個性を活かすため、穴をあける位置を見極める判断力と一日中コンスタントにあけ続ける集中力が必要な工程です。
また、穴あけのためのドリル針は、使用する人自身が針を研いで作業を行います。見た目の美しさ、耐久性に影響する穴口。綺麗な穴口のためにはドリル針を研ぐ技術も重要です。
加工部の中で唯一やり直しのきかない作業が、この穴あけ。積み重ねた経験をもとに、穴をあける位置を自分で判断しなくてはなりません。商品の価値を上げるも下げるも、この穴あけにかかっています。

真珠は貝の体内で育まれる宝石です。そのため、真珠を形成する過程で、真珠層が汚れや不純物を巻き込んだり、本来の輝きを失ったりすることがあります。大月真珠では、真珠を磨く技術や真珠層の中に入った不純物を取り除く技術など、真珠本来の美しさを最大限に引き出すための独自の技術開発を行っています。
用途別選別、穴明けを経た真珠は、上記の加工処理を施し、本来の美しさをたたえ、それぞれの用途によりさらに細かく選別されます。

この工程では、主に形とキズによって選別を行います。まず形は、丸（真円）と変形の大きく2種類に分けられます。変形の中でもボタンのような形をしたものや、涙のような形をしたもの、平べったいものなど、様々な種類が存在します。変形だからダメというわけではなく、これも一つの個性。中には真珠層が厚く、綺麗な干渉色を発するような素晴らしい真珠もあります。

そしてキズは、無キズなのか一点キズなのか、あるいは目立ってしまう大きなキズがあるのか。さらにキズのタイプとして、盛り上がったキズ、凹んだキズ、引っ掻いたようなキズ、面がざらついた真珠なのかを見分けます。ここで重要なのは、キズの数や位置、程度など判別した上で、真珠層の巻きなど他の要素も加味し、真珠そのものの価値を総合的に判断、等級づけすることです。このキズ選別の質が、次の連組工程の仕上がり、連相の良し悪しに大きく影響します。

連組は、連用材選別（両穴選別）によって、大きさ、形、キズが揃えられた真珠を半製品（金具をつける前のネックレス）に仕上げる工程です。
「連」とはネックレスのことを指し、連組とは、選別を繰り返して品質を合わせた真珠を一本のネックレスに組む（仕上げる）、いわばネックレスづくりの最終工程です。均一感のある連をつくるため、巻き、色、光沢の要素がある程度揃うようさらに選別しながら連組を行います。

ネックレス全体の均一感を「連相」といい、この連相がネックレスの価値を決める上でとても重要な要素となります。連相の良いネックレスに仕上がるように細部まで抜かりなく、一つ一つ見極めながら並べていきます。

そして、組み終えた真珠が綺麗に見えるよう向きを考慮しながら糸を通し、連が完成します。

完成した半製品（金具をつける前のネックレス）は、類似した種類ごとに整理し、束ねていきます。一束ごとに値段をつけた上で、営業部門に渡します。一日あたり、一つの品質で500本前後、多い時には1,000本を超える連を組んでいます。同じ真珠でも、選別技術によって値段が何倍も違う連ができあがることもあります。良いネックレスをつくるには、真珠の価値や小さな違いを見極める技術が必要不可欠です。

この工程では、用途別選別にて片穴材として分けられた真珠を、さらに形、巻き、色、照りなどの要素を総合的に判別し品質分けを行っています。片穴材はキズが少なく、自然の産物である真珠の中でも非常に価値があるものとされています。そんな希少性の高い真珠を手のひらの上で転がし、一つ一つ丁寧に厳しい基準でチェックしていきます。

加えて、イヤリングやピアス用として似通った2つの真珠をセットにしていくペア組みも行います。一つとして同じものがない真珠の中からペアを作る作業は、まさに職人技です。

南洋真珠は一つのチームで用途別選別からキズ選別、連組、ルース選別までのすべての工程を担っています。

真珠の種類以外にもサイズやカラーバリエーションも豊富なため、それぞれの魅力を活かせるよう選別・連組を行っています。