アコヤ真珠養殖には多くのアコヤ貝が必要となります。大月真珠では、三重県にある専用施設において人工採苗を行っています。優秀な貝を人工的に掛け合わせ、新しい貝を生み出しています。

採苗当日、筏に吊るされ大切に育ててきた親貝を引き上げます。いよいよスタート。

親貝候補の貝を開き、およそ100個の中から3個程度選び出します。

一つずつ貝の状態を見て親貝を決定します。貝の内面の美しさを見極め、健康状態の優れているものを選んでいきます。

選び出された親貝からそれぞれ精子と卵を取り出し、水槽内で混ぜ合わせて受精させていきます。

午前中に受精した稚貝の赤ちゃんは、午後には元気に浮遊しています。照明を落とし懐中電灯の光を向けると白い粒状の赤ちゃん貝が見えます。

受精後約1 ヶ月は施設内の水槽で飼育します。その後、各地の養殖業者のもとへ出荷されていきます。

自社で使用する稚貝は、成長を見ながら海に移します。

海に移した後は約1~2年かけて育てていきます。

海には多種多様な生物が存在し、時にアコヤ貝の成⾧を妨げます。アコヤ貝にカキやフジツボ、イソギンチャクといった他の生物が付着すると、餌となるプランクトンを捕食してしまうのです。これを防ぐため、定期的に掃除を行い、付着物を取り除いていきます。

春から秋にかけて、アコヤ貝に核とピースを入れる挿核手術をします。この期間、工場では朝から夕方まで終日作業を行います。

挿核する貝はあらかじめ口を開けておきます。挿核を手短に行うためです。

核とは、真珠層と構造を一にする淡水産二枚貝の貝殻から球状に削り出したものでいろんなサイズがあります。作りたい真珠の大きさ、挿核する貝の大きさなどを考慮して使用する核のサイズを決定します。

ピースとは、アコヤ貝の外套膜と呼ばれる組織の一部分のことで、貝殻の内面の模様（真珠層）を形成する成分を分泌する働きがあります。

アコヤ貝の胎内でピースが核に張り付くような状態にすることが、この作業において最も重要なポイントです。

この工程はすべて人の手で、貝を一つずつ手に取り、貝のコンディションを判断しながら進められていきます。

貝の大きさや貝の健康状態によってどのようなサイズの真珠を作るのかを見極めます。

オペは専用の道具を使って貝にメスを入れ、核とピースを挿入しますが、指先はもちろん全身に繊細な動きが求められます。

挿核の終わった貝は専用のかごに入れ穏やかな海に戻します。貝が動きやすい状態だと回復が遅れてしまうので、間隔を詰めて敷き詰めて並べます。

十分に挿核による傷を癒やします。時々、かごを引き上げて貝の中身を調べ、傷口の治り具合を確認します。

体力が回復した頃にネットに移し、沖の漁場に引っ越します。餌の豊かな沖合で貝自身に大きく育ってもらうためです。これからしばらく真珠を採り出すまでの間大切に育てられます。

浜揚げまでの間、胎内でピースから真珠層の成分が分泌され、核の周りに少しずつ真珠層を巻いていきます。定期的に貝の状態のチェックをし、定期的に貝の付着物を取り除きます。水流で外側から刺激を与え、真珠層の成分の分泌を促す作業も行います。

冬になると、水温が下がりアコヤ貝の成⾧が鈍くなります。

それに伴い真珠層の成分の分泌も緩やかになり、きめ細やかな真珠層が形成されます。

同時に光沢も増していきます。このタイミングを見計らって海から引き揚げます。

多くの付着物も付き真珠を取り出すのは大変な作業ですが、ナイフを使って一貝ずつ開いていきます。貝肉だけを取り出しミキサーにかけ真珠を採り出していきます。

いくつかは直接真珠を採り出して出来がどうかをチェックしていきます。

美しい真珠が誕生するこの瞬間は、養殖工程の集大成です。上手くいかないときもあるので、この結果を見届ける瞬間はとても緊張します。

浜揚げ直後の真珠です。様々な品質の真珠が誕生しました。大まかに分けて本社に送り、さらに細かく選別していきます。